読書8「図解でわかる 14歳から知っておきたいAI」(2018年1月28日 初版)
NHKで爆笑問題が司会を務めた「NHKスペシャル マネー・ワールド〜資本主義の未来〜(2)仕事がなくなる!?」を観た。
そこで紹介されていた「AI」にとても興味を持ち,AIについて知ろうと思い,今回記録する本を借りて読んだ。
「図解でわかる 14歳から知っておきたい AI」
本書は,全96pほど(目次,参考文献などのページ含み)の薄い本で,図も豊富に載せられていて非常に読み進め易い本だった。
また価格も1200円(税別)と比較的求めやすく設定されている。
本書の構成は大きく分けて4部で構成されている。
第1部 「AIとロボットの歴史」
ここでは,AIの実現を夢見た科学者からそれを実現した科学者たちを簡単に紹介している。
1956年に世界で初めてAI(人工知能)の開発会議を行ったジョン・マッカーシー(1927〜)を始め,楽観論で始まったAI研究を反省したエドワード・ファイゲンバウム(1936〜),シンギュラリティを主張したレイ・カーツワイル(1948〜)などが紹介されている。
引用:https://andai.co.jp/about-john-mccarthy/
(エドワード・ファイゲンバウム)
引用:
https://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130124/242708/?ST=smart
引用:https://andai.co.jp/about-ray-kurzweil/
シンギュラリティについて
https://bizhint.jp/keyword/42911
ここまでの少ない情報でも,実は知らない単語や人名が多く出てきていて,序盤〜中盤前半までは書いてあることを理解できなかったりイメージしにくいことが多々あった。
大体は図解で理解することはできたが,それでも随所に散りばめられた専門用語を知らないために内容が頭に入りにくいところもある。
そういう意味では,入門者に取っては少し難解に感じるかもしれないが,調べればすぐに理解できる用語なので安心してほしい。
読者(特に入門者)に自主的な学習を仕向けると言った点でも本書は、やはり入門書に向いていると思われる。
…少し話が逸れたので戻そう。
第2部では「AIの基礎知識」が紹介されている。
ここでは,テレビなどで耳にする「ビックデータ」や「スーパーコンピューター」を始め,「機械学習」や「ディープラーニング」といった聞きなれないワードも紹介されていた。
引用:
www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h24/html/nc121410.html
引用:
https://tech-camp.in/note/technology/43340/
「機械学習」とは,大量の情報から,それらを分類して整理し,答えを導く(アクションの判断をする)過程のことである。
引用:
https://qiita.com/taki_tflare/items/42a40119d3d8e622edd2
例えば,大量の写真データから宇多田ヒカルを探すという課題が出されたとする。
するとAIは,クラスタリングと呼ばれる手法を用いて,髪型,体型,服装,肌の色,などから宇多田ヒカルに近い写真を探す作業を行う。
AIはこの作業を人間よりも早く,そして長く(24時間休みなく)行うことができるので,このクラスタリングを繰り返し行うことによって,最も宇多田ヒカルに近い写真をより確実に探し出すことができる。
これを機械学習と呼び,これがAIの強みとも言える。
「ディープラーニング」とは,深層学習とも呼ばれる。
この方法は,アメリカの心理学者ローゼンブラットが考案したもので,人間の脳神経回路を模したニューラルネットワークと呼ばれる計算モデルを基にしている。
この案は,実用的ではないとされ強い批判を受けていたが,ジェフリー・ヒントンにより現在のディープラーニングが始まった。
ディープラーニングが進むことによって,将来的には人類地の獲得がなされ,超自我(自我を監視するもう1つの自我)が生まれるにではないかと考えられている。
第3部では「AIで変貌する仕事」を紹介している。
ここでは非常に興味深い研究結果が紹介されていた。
イギリスのオックスフォード大学准教授のマイケル・オズボーン氏は,アメリカの702種の職業について,どこまでが自動化可能かを調査した。
引用:
https://www.axismag.jp/posts/2015/03/53502.html
なんと,10〜20年後には労働人口の47%がAIやロボットに代替わりされる可能性があるというのだ。
また,日本でも同様の研究が行われている。
野村総合研究所がオズボーン氏らと共同で601種の職業について調べたところ,49%がAIに代替可能というショッキングな結果が示された。
このデータをもとに,AIに置き換えられると予想される職業は本書に掲載されてるものだけでも30種類を超える。
ライン作業は勿論のこと,介護労働者もAIに置き換わる可能性があるというのだ。
最近見たNHKの番組では,介護は人の命が関わるためAIの導入が遅れているといったことを報道していたが,やはり介護もAIに置き換わる可能性があるのか…と驚嘆している。
逆に,AIが不得意で人間に残される仕事としては,以下の要素を含むものが残ると挙げられている。
【AIが不得意なこと】
1.物語る能力
2.身体の美と運動
3.共生力とコミュニケーション
4.創造性
5.独創性
6.宗教と善・美
この部で1番興味を惹かれた記事がある。
それは,「高齢者介護の現場で切実に必要なのはAI排泄支援ロボットではないか」というAIと介護に関する紹介だ。
以下に文章を引用させていただく。
『介護業界は現在,厳しい状況に置かれている。最も懸念されているのが人手不足。増え続ける高齢者介護のニーズに対応するためには,新規の人材確保が,各事業所にとって大きな課題だ。
しかし,ここに深刻な数字がある。介護施設の非正規雇用人材の約48%が,1年以内に離職している。正規雇用職員にしても,約33%が,やはり1年以内に離職している。
では,なぜ早期退職者が多いのか。調査によれば,人間関係,給与,将来性などが,退職理由に挙げられるが,ここに現れない理由として,多くの関係者が訴えるのは,排泄介助のつらさ。
誰でも他人の排泄物の臭いを嗅ぎ,その処理をするのは嫌なもの。この介助作業に対して,新人スタッフが戸惑い,我慢し,被介護者との関係に疲れ,最後は人間嫌いになる。そんな心の軌跡が,ネット上の書き込みなどから伺い知ることができる。
介護現場で最も求められるのは,スタッフを排泄介助から解放する,そんなロボットではないだろうか。現在すでに自動排泄支援路ロボットが開発されてはいるが,介護業界の複雑な事情が壁となり,なかなか普及にまで至らないのが現状。』
(p.68 一部改変)
引用:
www.care-mane.com/feature/764?CID=3&CP=1
少し長くなったが,「高齢者」「介護」という言葉は身近なものでタイムリーな問題提起だったので取り上げた。
介護施設の人材の離職率が高いということは耳にしていたが,ここまでだとは想像を超えていた。
それくらい,介護というものは人間にとっては相当な負担なのだろうということが伺える。
介護予防に力を入れるのはもちろんのことだが,AIによる介護の補助というのが加われば、介護者,被介護者にとって今よりも生きやすく快適な社会が待っているのではないだろうか。
私も介護に近いものを毎日しているが,やはり精神的な負担が大きく,モチベーションも保つのが難しいものなので逃げ出したくなることが多い。
介護分野でのAI導入が実現することを強く願っている。
最後の第4部では「AIと人間の未来」について語られている。
この部はこの本の中で1番面白く,興味深く読み進めた。
人類の技術確信のスピードは,指数関数的に早く(最初は目に見えないほどなのに,そのうち,予期しなかったほど激しく,爆発的に成長する)なっている。
約38億年前…地球上に生命誕生
約18億年前…細胞の発生
約5億3000年前…カンブリア大爆発により,1000万年の間に,現在の生物の原型となる多様な種が一気に現れる。
引用:
nihon.matsu.net/seimei/09.kanburia.html
600〜700万年前…最古の人類が現れる
約20万年前…ホモ・サピエンスの登場
約1万年前…農耕と文明の発祥
約5000年前…文字の誕生
約150年前…産業革命
進化を経るに連れて,進化から次の進化までの間は(文字通り)桁違いに短縮されてきた。
1940年代にコンピュータが開発されてからは,技術の進化がさらに加速。
スマートフォンは僅か数年で世界中に普及。
こうした進化の様子から,近い未来にシンギュラリティ(先が予測できないほどの劇的な変化が起こる臨界点,技術的特異点)は避けられないと予測している。
この事実を耳にしただけでも,相当な驚きと衝撃なのに,それがAIという形で現実化しているのだから,これは受け入れるべき現実なのだと感じさせられる。
ホーキング博士らは,「AIは人類を滅亡させる危険性がある」といった警鐘を鳴らしていた。
引用:
https://www.google.co.jp/amp/s/www.cnn.co.jp/amp/article/35127106.html
AIが人智を超える時…人類は一体どうなるのだろうか。
例えば,AIが戦争に悪用されてしまうと第三次世界大戦が勃発するのは免れないだろうし,「地球環境を守れ」といった正しい使い方をしたとしても,「地球から人類を排除すればいい」といった回答を導き出せば,人類は文字通り排除されるだろう。
AIは、私たち人間の生活を快適にし,さらに高度な文明を発展させる力になることは間違いないだろう。
しかし,プラスの面ばかりではなく,AIに人間性を乗っ取られたり,排除されるだろう危険性を十分にはらんでいるのだ。
どちらの可能性も検討しつつ,慎重に,しかし迅速にAI研究を進めていくことがこれからの時代には求められていくのだろう。
過去にAIを想像して描かれた本や映画を紹介していたので,それを記録してこの記事を締めようと思う。
1番古い作品では,紀元前8世紀にギリシアで書かれた『イーリアス』(ホメロス)が紹介されている。
他にも多くの作品が紹介されている。
詳細を紹介していると長くなってしまうので,タイトルのみを記録しておく。
【書籍】
https://www.google.co.jp/amp/s/www.cnn.co.jp/amp/article/35127106.html
『アルゴナウティカ』アポロニオス/紀元前3世紀(ギリシア)
[uploading:CF45AE28-B436-41D3-B7AE-897F679171CA/L0/001]
https://www.amazon.co.jp/dp/4061975811/ref=cm_sw_r_cp_api_.cbYBb34NSE40
『撰集抄』作者不詳/13世紀(日本)
『フランケンシュタイン』 メアリ・シェリー/1818年(イギリス)
『未来のイヴ』 ヴェリエ・ド・リラダン/1886年(フランス)
『われはロボット』アイザック・アシモフ/1950年(アメリカ)
『月は無慈悲な夜の女王』ロバート・A・ハインライン/1966年(アメリカ)
『我は僕ならずや』スタニスワフ・レム/1971年(ポーランド)
『未来の二つの顔』ジャイムズ・P・ホーガン/1979年(イギリス)
『ニューロマンサー』ウィリアム・ギブスン/1984年(アメリカ)
『マイクロチップの魔術師』ヴァーナー・ヴィンジ/1981年(アメリカ)
『ゴールデン・フリース』ロバート・J・ソウヤー/1990年(カナダ)
『シンギュラリティ・スカイ』チャールズ・ストロス/2003年(イギリス)
『叛逆航路』アン・レッキー/2013年(アメリカ)
『断崖への航海』ジャイムズ・P・ホーガン/1982年(イギリス)
【映画】
『メトロポリス』アンドロイド マリア(フリッツ・ラング監督 ドイツ 1926年)
『禁断の惑星』ロボットのロビー(フレッド・M・ウィルコックス監督 アメリカ 1956年)
『プレードランナー』レプリカント(リドリー・スコット監督 アメリカ 1982年)
『スター・ウォーズ』シリーズ 冒険仲間のドロイド(ジョージ・ルーカス監督 アメリカ 1977年〜)
『ターミネーター』殺人アンドロイド (ジェームズ・キャメロン監督 アメリカ 1984年)
『トロン』コンピュータ選手(スティーブン・リズバーガー監督 アメリカ 1982年)
『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』義体のヒロイン(押井守監督 日本 1995年)
『アンドリューNDR114』万事家事ロボット(クリス・コロンバス監督 アメリカ 1999年)
『マトリックス』AIの支配(ラリー&アンディー・ウォシャウスキー監督 アメリカ 1999年)
『トランセンデンス』人間とAIの融合(ウォーリー・フィスター監督 イギリス・中国・アメリカ 2014年)
『A.I.』養子ロボット(スティーヴン・スピルバーグ監督 アメリカ 2001年)
2018年10月18日(木) 13:58